フランスで中医学にふれる |
中医師といっても真の中国人で何代も中医師というお医者さんです。伝統服で迎えてくれました。
診療室に入ると、そこはもう別世界。
やわらかい光の中、古い机も置物も白黒の家族の写真もこぽこぽとあふれるミニ噴水もすべてはハーモニー。
映画にでてくるような30年代の上海の診療所といった趣です。
反対側の診察台の壁には60年代の文化革命時代風の経絡の全図や舌の写真で埋まっておりまして、このコントラストもまたスゴイ。
ジャスミンティーを大きなカップに入れてくれ、お茶を飲みながらのゆったりした診察です。
フランス語は苦手なのか、フランス語/中国語でかかれた分厚いファイルを取り出しての問診です。
問診も本当に色々なことを聞きます。40分くらいかけたでしょうか?
脈の取り方一つも西洋医学とは違いますし、舌、特に舌についている苔をみたり、ちょっと薬膳で中医学を学んでいる私には興味深々。だからこそオットーを実験台として送り込んだんですけどね。
オットーの体質を判断し、食事指導もしてくれました。食材をノートに書きながら、分からない言葉があると漢字を書き書き筆談に入ります。オットーはそのとき完全に蚊帳の外。知識としていろいろ得られることがありました。
でもかかった費用は全額負担。フランスでは治療費がセキュからおりません。
もらった薬は、いまどきの中国人ももう飲まないような、大なべに中薬をいれて何十分も煎じて漉すタイプのものです。
〔においもすごかったけど、色もすごい。しまいには濁ったカラシ色となりビジュアル的にもせまってきます。オットーは一日3回デカマグカップについで飲んでおりました。鼻つまんで。こんなフランス人あまりいないだろなー。〕
もうニオイがそこらじゅうに充満。
チビさんたちも、この独特なにおいにノックアウト状態です。
アパートの同じ階、というか向かいはキャビネ メディカル、お医者さんの診療所なのですが、そこまでプンプンにおっていたことでしょう。一部の患者さんは、中医師に鞍替えしたのかと思った人もいたかもしれません。
同じ建物内の近所のムッシューに中医師のところに行ってみてもらったといったところ、すぐに家からとってきて貸してくれた本は、「エセ医療 単語辞典」・・・。〔ちなみに仏語では charlatan=ペテン師、いかさま師の意味の他にいかさま治療師、藪医者のことを指します。よく自然治療=médicine douce のことを言うときに使われる言葉です。〕
ページを開けはあるある。「気」、「経絡」、「針」などの言葉の数々が。
日本人の実家の父〔理科系〕でさえ、眉唾だと思っているし、フランス人なら特に、見えない「気」とか「経絡」なんて概念がないから怪しいと思うんでしょうね。
東洋人の奥さんに連れてかれて、治療費全額負担なんて可愛そうな人だなー。なんて思われたかも。
〔そんなオットーはまさに私のcobaye。Cobayeはモルモットのことですが比ゆ的に実験材料という意味でよく使います。〕
でも時間はかかったけれど、オットーの体調はそれからとてもよくなりましたよ。
あのプンプンたる妙薬も効き目があったと思います。〔それから何回か通って、さらに飲む羽目になった。〕
その中医師から、オットー用と私にもレシピを頂いたので、今回作ってみました。薬酒です。
私のは活血化オといって血の流れをよくする中薬中心のものです。
いまからプンプンとしたニオイがしてきます。
気分は漢方薬局の薬剤師。
または魔法使い。時代が違えば十字架にかけられて焼かれていたでしょうか。
中薬はフランスでは入手が難しいので、東京の漢方の老舗や横浜中華街で買ったり、中国人のお友達に里帰りの際、リストを渡して買ってもらったりしたものです。
中国人のお友達に買ってきてもらった薬袋。感謝です。
アルコールはジンと果物酒用のを買ってきました。
さあ ビンに入れて3週間ほど寝かします。
効き目はもちろんお味のほどは後日報告ということで。